[2020年7月16日②]Go Toトラベルキャンペーンについて

Go Toトラベルキャンペーンについて多くの質問を頂きましたので、私の考えを述べます。

結論は、「現在の対象と時期で実施することは慎重であるべき」です。

私は何度も述べてきたように、都県をまたぐこと自体にリスクがあるわけではなく、場所・空間のリスクと、そこにいる人々の行動のリスクに着眼するべきだと考えます。
行動全体を抑え込むことによって社会経済活動が著しく阻害され、雇用や支援を失う等によって取り戻せないダメージを受ける人々がいることを考えると、社会経済活動と感染予防の両立を図ることが重要です。

どうしても実家に帰らなくてはならない方も含め、様々な事情を抱えて都県をまたぐ移動をせざるを得ない方もいるでしょう。
そういう意味では徐々に、自然に、観光や宿泊が行われていくことは非常に重要なことだと思います。

しかし、政府のGo Toキャンペーンは税金によって大幅に旅行代金を割り引き、一気に観光需要を作り出すもので、夏休みの時期と重なることで、観光地に人為的に大きな変化を加えます。
また、このキャンペーンは旅行会社を経由して予約したパック商品の方が補助対象範囲が広く、個人で手配した旅行の場合は宿泊料金のみが補助対象となるため、必然的に多人数、家族以外のグループ旅行の需要を喚起する制度設計となっています。

私たちは感染者の行動状況から会食によるリスクはやはり大きいと感じており、家族ではない多人数での観光に伴う宿泊、飲食に加えて、車内での会話等によって感染が広がるリスクは無視できないものがあります。

一定割合の国民が疑問に思う中でこのキャンペーンを強行し、観光に伴う感染者が出れば、それがこのキャンペーンによるものか否かを問わず社会的に問題となり、観光や帰省に強い自粛ムードを作りだすこととなります。それは観光業にとって中長期的にはダメージが大きいのではないでしょうか。

まずは東京都への宿泊や旅行は対象外としたり(東京の人が地方に行くより、地方の人が東京に行って地元に広げる方がリスクが高い)、1都3県以外の住民を対象とすることや、東北・中国などブロック内での旅行に対する補助とし、その後の状況を見て徐々に広げていくことが望ましいのではないでしょうか。家族旅行のみを当面対象とすることも選択肢です。
なお、千葉市では政府施策に先駆けて「STAY Chibaキャンペーン」と称して県内の方が市内に宿泊する場合に半額を補助する支援策をスタートさせています。

(追記)
政府が東京都発着を制限してスタートするようですね。実施直前に変更することは大変だったかと思いますが、決断に敬意を表します。
東京都民が地方に感染を広げると懸念されがちですが、地方の人が東京に行って会食等で感染して地元で感染が分かるケースの方が多いので、その部分を一旦補助対象外とすることが最も合理的と考えます。

このキャンペーンは観光業とその周辺産業の方々を支援することが目的ですが、1兆円の国費を投入するのであれば、感染リスクの高い業種に対して強い営業自粛措置と、それに伴う金銭的補助を行うことも可能なはずです。
どのような国費の使い方が感染を効果的に抑えて、経済活動を元に近い形に戻せるのか、新型コロナウイルスとは長い付き合いになりそうなので、しっかり考えていきたいですね。