第2章 決断の積み重ねと職員の創意工夫 ~行財政改革②~

 このように大きな公共事業については一つ一つ見直し、「やらざるを得ないモノはやる」「見直せるモノは見直す」「凍結した方がよいモノは凍結をする」と判断を下してきました。それ以外の一般の事業についても千葉市版事業仕分け「外部評価員による事務事業仕分け」で大胆に見直してきました。
 事業仕分けは民主党政権での事業仕分けが有名ですが、千葉市はそれより1カ月ほど早く取り組んでいました。後に消費者庁長官を務める元・我孫子市長の福嶋浩彦さんら官民混成の評価員を編成。市民にも意見を求め、非常なオープンな形で取り組みました。この時に結論が出た案件は翌年の2010年度予算に反映することになるのですが、 15事業の廃止などが盛り込まれ、千葉市政において過去に例の無い大幅な予算見直しでした。
 例えば、 65歳以上の1人暮らし高齢者に公衆浴場無料券を年 48枚支給する「シルバー健康入浴事業」(約6000万円)、 65歳以上の全員に1回の施術に付き800円を、年 24回を限度に助成する「はり・きゅう・マッサージ施設利用補助」(約1億3000万円)などが見直しの対象となりました。
 いずれも高齢者が少なかった時代に生まれた事業で、当時は大きな予算が必要無かったので問題のない事業でした。それが平均寿命がどんどん伸び、高齢者が大幅に増え、予算規模が十倍・百倍になっても、高齢者の批判を恐れて見直しができなかったものです。
 当然、高齢者や業界団体から批判されました。比較的所得の高い住民層が住んでいることで有名な地域の敬老会でも「これだけ日本、千葉市に貢献してきた高齢者の予算をどうして削減するんだ」と言われたことが印象的でした。
 投票に必ず行く高齢者から批判を受ける施策を断行することは、政治生命を危機にさらすことになり、政治家としては何も得はありません。ですが、将来を見据え、誰かがやらなければならないことだったのです。私は政治家を続けるために政治家をしているわけではありません。今までの政治家ではできなかったことを行うために政治家になりました。
 千葉市はその後も事業の見直しを不断に行い、見直しで生まれた財源を、その時もっとも必要とする事業に充てることができるようになりました。

 この事務事業の見直しにおいては、当時行政管理課長だった水口順併氏の存在を忘れることはできません。
 千葉市にとって初の外部評価員による事務事業評価を実施するにあたり、制度設計や開催だけでも大変なのに、見直す対象事業は市民、各種団体、議会から反発を受ける可能性の高いものばかりでした。並みの職員ならノイローゼになってもおかしくない仕事でしたので、私も気になって行政管理課の様子を見に行ったこともありましたが、水口氏は持ち前の明るさで飄々と遂行し、部下を統率して、やり切ってくれました。
 彼はその後、千葉市にとって初めて民間から局長級で招へいしたCIO(最高情報責任者)補佐監を支える部長となり、千葉市の行政改革とICT(情報通信技術)化に大きく貢献してくれましたが、病により帰らぬ人となりました。水口氏の業績をここに記し、心からの感謝を送ります。

 大幅に市民向けの事業も見直す以上、絶対避けられないのは、自らの身を切る改革でした。政令市最悪の財政状況である以上、まず私自身が政令市最低クラスの給与にカットせざるを得ないと判断し、月額給与 20%、期末手当 50%、退職金も 50%カットしました。副市長以下の特別職も大幅にカットした上で、いよいよ一般職も含めた職員給与を大幅にカットすべく労働組合との協議に入りました。
 当時、千葉市の財政状況がなんとなく厳しいことは理解していても、我が事として強く認識していた職員はそれほど多くありませんでした。
 民間企業でしたら、会社の財務状況が悪ければ自分の給与に跳ね返ってきますし、最悪倒産して職を失いますので、当然関心を持ちます。
 ですが、自治体は財政状況が悪くとも、借金を重ねれば予算は組めますし、職員の給与が下がることはありません。財政事情に関心を持つ理由がないのです。管理職だけでなく一般職の給与が減らされるとなって初めて、そこまで自分たちの市の財務状況が悪化していることを認識したのです。
 組合との交渉は難航しました。組合は職員の生活を守るための存在ですから抵抗は当然です。市職員組合は選挙で対抗馬である元副市長を応援しましたが、もともと私は民主党の市議だったこともあり、労働組合の方々とは信頼関係がありました。組合活動の大切さも理解しています。ですが、こちらも引くことはできません。総務局も厳しい交渉を重ねてくれましたし、組合幹部も千葉市が置かれている厳しい状況と、これから市民向けの事業も大幅に見直しされることを理解して、給与カットを理解してくれました。ただ、彼らは「これから新しく入ってくる職員には責任はないはずだ。良い職員が入ってこなくなるリスクがある」と訴えていましたので、若手職員の削減は対象外としました。これにより月額給与9~3%カット、さらに政令市初の退職金カットという政令市では最大規模の給与カットが妥結されたのです。当時の組合幹部の決断と配慮に心から敬意を表したいと思います。
 こうした取り組みにより、人件費の削減効果は9年間で約152億円に上りました。外郭団体も3団体解散させ、1団体を統合。スリム化を徹底しました。
 職員の大幅給与カットが大々的に報道された結果、多くの市民に「今度の市長は市政を立て直そうとしている」と理解してもらえましたし、様々な事業の削減が発表されても、職員への批判はある程度抑えることができました。
 こうした苦しい改革を支えてくれたのは総務局や財政局の心ある職員たちでした。給料を減らされて喜ぶ職員がいるわけはなく、先輩・同僚からも批判的なことを言われたはずです。私が今まで当たり前だったやり方を様々と変えていく中で、局長級を始め色々な職員が裏で私の文句を言っていることは聞こえていましたし、議員に告げ口をする人間もいました。そんな中でも核となる職員たちが、千葉市の未来のために職責を全うし、一連の改革を実務面で支え続けてくれたことに感謝しています。
 私自身もこの 10年間で総額約9000万円をカットしたことになります。妻にはなかなか言いたくない数字です。ちなみに、私はポーズだけの「身を切る改革」というのは好きな方ではありません。人件費を削減することは最後の手段であるべきと考えており、安易な給与カットには賛同しない立場です。当時の千葉市の財政状況を鑑み、やむを得ないと判断したものであり、財政再建が進むにつれてカット幅は縮小し、2020年4月からは市職員の給与カットは全て解消されています。

職員の回想 ~当時の総務部長(志村 隆氏)~

○職員の給与カット
 財政健全化策の一環としての職員給与カットでしたが、カット率の高さ(最大9%カット)や他市に例のない退職金カット(最大3%)など、当時全国的にも厳しい給与カットだったため、職員の反発や組合の抵抗は相当なものがありました。組合交渉は難航しましたが、2010年1月末に何とか決着しました。
 自分自身にとっても厳しい施策でしたが、この給与カットは、金額的な面よりも、職員全員が千葉市の財政危機への意識を強く持つことができたことが一番大きかったのではと思います。
 なお自分が退職するときに、カットを終了する目途が立ったことは嬉しい限りでした。
○事務事業評価
 市の実施する各種事務事業の必要性や妥当性について、外部の専門委員が評価するというものでしたが、市民意見聴取や傍聴もあり、当時かなり先進的な事務事業評価だったと思います(後に民主党政権が類似の事務仕分けを実施しました)。
 どのような事業も受益者や関係者がいることから、行政自身自ら廃止等が難しいものも、客観的視点で判断できたということは重要でした。外部の者が短時間で判断することから視点が一方的になる場面もあり、難しいと感じることもありましたが、総合的に見れば、市の事務事業の存在意義を確認することにもなったと思います。

職員の回想 ~当時の財政部長~

○職員給与の削減
 厳しい財政状況を踏まえ、独自の給与減額措置最大9%カットを実施するとともに、政令市初となる退職手当のカットを実施。
 (財政的な効果はもとより、職員の意識改革、全職員が自分の給与までカットされることに対し、行政改革への意識向上が、解除までの大きな要因となったと考えている)

○公共料金の見直し
 市民負担の公平性の観点から、市民生活への影響を考慮しつつ、受益者負担を設定した基準により、コミュニティセンターの有料化や体育施設の適正化等を実施。2012年度には、墓地管理料、 25年度から家庭ごみ処理手数料等を実施。
 (市政をオープンにし、説明責任を果たす取り組みが浸透してきたこともあり、議会そして市民の理解が得られたものと考えている)

○外郭団体の廃止、 21団体→ 17団体
 指定管理者制度が導入されたことにより、市職員と同等の給与体系である外郭団体の存在感が薄れたことから、一部の団体の統廃合を実施。
 2010年度=勤労者福祉サービスセンターを産業振興財団に統合。
 2010年度=大きな損失を抱えていた、土地開発公社を廃止。
 2011年度=民間への業務委託が可能なため、動物公園協会を廃止。
 2016年度=存在意義が低下した、みどりの協会を廃止。
 (依然として必要な外郭団体が多くあるものの、大きな損失を抱えていた土地開発公社を早期に処理できたことは、財政的にも大きな効果があった。議会対応が大変であったが、あの段階で決断していただいたことが早期の「脱・財政危機宣言」解除につながったものと考えている)

○主な事務事業の見直し
 事業効果が薄れた事業や他の手法で代替可能な事業等について、市民生活への影響を考慮しつつ見直しを実施。
 難病疾患見舞金支給の廃止、敬老祝金(長寿祝金)の支給対象年齢等の見直し。
 (これまで高齢者や障害者施策の見直しは、聖域化されてきたが、宣言を行ったことにより、事業の組み替えを前提に、多くの事業見直しが進んだと考えている)

 止める、カットするだけが行財政改革ではありません。創意工夫により、大きな財政効果を上げた事例を紹介します。それは県営水道と市下水道の徴収一元化です。
 私は千葉市に住んだ時に違和感を感じました。水道料金を支払った翌月に下水道料金の請求が来るのです。今まで住んだ都市では上水道と下水道は一緒にまとめて請求が来ており、上水道と下水道が別々に請求する都市に住んだのは初めてでした。これは県営水道が給水する県内 11市(千葉市、成田市、市原市、鎌ケ谷市、市川市、船橋市、松戸市、習志野市、浦安市、印西市、白井市)において同様の状況で、全国的にも珍しいケースです。
 上水道と下水道で別々に請求するということは、住民側の手間も二重に発生することはもちろん、行政サイドも収納事務や滞納管理、システム運用などが別々で、二重にコストをかけていることになります。
 さらに、上水道は電力やガスといったライフラインの中で最も滞納率が低く、100%に近い徴収率を誇っているのに対し、下水道は滞納しても使用を停止できる性格のものではないため徴収率が低くなりがちです。上水道と下水道を徴収一元化することで下水道も上水道と同程度の徴収率まで引き上げられ、その財政効果は莫大なものがあります。
 私は議員になった2007年より、この問題について研究してきましたが、当時、行政レベルでは課題と認識されていても各市の議会や県議会、マスメディアで、この問題はクローズアップされていませんでした。昔から千葉に住んでいる人にとってはこれが当たり前だと思っていたのかもしれません。
 千葉県と同様の状況があった神奈川県においては県がリーダーシップを発揮して徴収一元化を2003年4月に実現しています。本来であれば、こうした県内行政全体の効率化こそが広域行政体である県の仕事そのものですが、当時の県政には徴収一元化を自ら仕掛ける意思はありませんでした。
 そこで、市長就任後、徴収一元化に向けて千葉市が引っ張っていくことを所管に指示し、局長以下、職員一丸となっての奮闘が始まりました。
 まずは徴収一元化に向けた問題意識を関係者が持つことから始める必要があるため、市議会議員に説明することはもとより、私が就任後に始めた千葉市選出の県議会議員との県市間の懸案事項説明においても取り上げ、県議会で会派を超えて取り上げてもらいました。また、市政記者にも千葉県政の課題として情報提供したところ、ある新聞では千葉版で大きな記事となりました。

 こうした動きに加え、局長たちがそれぞれの人的ネットワークで関係市や県に働きかけてくれた結果、 11市がまとまって県と協議することとなり、県営水道と各市の下水道の徴収状況の整理、一元化に必要なシステムや制度設計などが具体的に検討されることとなったのです。この時、既に私が市長に就任してから3年の歳月が過ぎており、実現まで5合目まで来たという感じです。
 その後、システムや制度の設計が進み、県から各市へ徴収コストの提示があったのですが、ここへ来ていくつかの市がなんと徴収一元化に加わらないとなりました。
 「ここまで来てどうして?」と思い、各市の理由を聞くと「提示された徴収コストでは財政効果が出ない恐れがある」、「上水道と下水道を一括徴収することは違法だ」など、首をかしげる理由ばかりでした。
 徴収事務やシステムを二重に持ち、低い徴収率のままの現状に比べ、徴収一元化すれば財政効果が出ることはしっかりと計算すれば分かることです。また、徴収一元化が違法などというバカな理屈は、全国で徴収一元化が行われ、残るは千葉県のみという状況で何を言ってるんだと思いますが、公務員はたまに法規を杓子定規に捉えて、現実離れした解釈をするケースがあります。私も行革を進める中で職員が同じような主張をしてきた時もあり、制度元である国に確認させ、「問題ないに決まっているじゃないですか」となった例を何度も見てきました。
 こうした市に対して、それぞれの市長に資料を基に説明しましたが、「詳しくはよく分からないけど、一元化しない方が良いみたいなんだ」というような反応で、首長が所管の話を鵜呑みにせず、自分自身で数字や理屈について検証することの重要性を痛感します。
 結局、一元化に参加する市は千葉市、成田市、市原市、鎌ケ谷市の4市となり、市川市、船橋市、松戸市、習志野市、浦安市、印西市、白井市の7市は先行市の状況を見て判断するということになりました。
 これでは 11市分の規模で設計されたシステム費用等が分担できず、一元化自体の実施が危ぶまれましたが、県が7市分を建て替え、4市だけでも先行して実施することになりました。ここで2段階の実施を飲み込んだ県の判断は良かったと思います。

 長きにわたる調整、システム構築を経て、いよいよ2018年1月から、千葉市など4市で上下水道の徴収一元化が図られました。市民の皆さんからは「手続きや支払いが大変便利になった」と大きな反響がありました。
 気になる財政効果ですが、千葉市の徴収率は実施前の 98・6%から 99・8%へと大幅に向上、2018年度の下水道会計は一元化前の2016年度と比べ、2・2億円の大幅収支改善となりました。
 この結果を受けて、残る7市のうち市営ガスもあり、上水道と下水道の徴収一元化が難しい事情を持つ習志野市を除く6市が第二陣として一元化に参加することとなり、2021年1月から一元化されることとなります。
 千葉市が協議会の会長市となって職員とともに長年汗をかいたことで、千葉市以外も含めた県営水道給水エリア約295万人の利便性を向上させ、年間何億円もの財政効果がずっと発生することになったのです。
 市長に選んでもらったこと、実現に向けて市や県の職員が頑張ってくれたこと、全てに感謝し、達成感を感じた瞬間です。
 一方で、第二陣に参加した行政視点で見ると、行政、首長の意思決定によって実施が3年遅れたわけで、この3年間で得られるはずの財政効果を得られなかったことになります。各市にはそれぞれの事情があるので簡単には評価できませんが、どのような選択がベストだったのか、改めて総括していくことが必要ではないでしょうか。
 この上下水道の徴収一元化を巡る話で私が伝えたいのは、行政には首長と職員の決断や創意工夫によって改善できる余地がまだまだあること。大きな効果を生み出す案件ほど他行政との膨大な調整作業を要するものが多く、数年で職員がローテーションで入れ替わる行政では誰かがリーダーシップを発揮しない限り放置されたままになりがちなこと。だからこそ行政に携わる私たちの使命感が問われている、ということです。
 私はこの間、市政だよりの市長メッセージでこの案件について何度も取り上げ、市民生活に密着した行政改革の意義について伝えてきました。

ちば市政だより 市長メッセージ (抜粋)
 <平成24年2月1日>
 私は政令市であり県都である千葉市と千葉県との密接な連携は市民・県民にとって非常に重要だと考えており、市長就任後すぐに森田知事と会談し、積極的に県市間の協議を進めていくことを確認しました。
 その後、副知事・副市長をトップとする「千葉県と千葉市の新しい関係づくり連絡会議」が設置され、継続的に協議をしています。
 現在協議を進めているのは県水道料金と市下水道料金の一括徴収です。皆さんは上水道と下水道の請求が別々に来ることに不自然さを感じたことはあるでしょうか。実は上下水道を別々に徴収している自治体はほとんどありません。別々に徴収しているということは徴収員、徴収システムなどの二重コストが発生しており、市民にとっても手続きや支払いの手間が増えることになるため、県に対して一括徴収に向けた提案をしており、現在前向きに協議が進んでいます。
 なお、市内の一部地域は千葉市水道局が給水しており、こちらは今年の 4 月から一括徴収を開始します。一括徴収によって、料金徴収業務の経費削減などが図られるため、その効果額は毎年約 1 千万円と見込まれ、財政健全化にも大きく寄与します。
 今後も行政の枠組みに縛られることなく、市民・県民にとって最適な県市関係を構築していきたいと考えています。

 <平成28年12月1日>
 現在進めているのは県水道料金と市下水道使用料の一括徴収です。平成 24 年2月のメッセージで、上水道と下水道を別々に徴収している自治体は珍しいことをご紹介し、一括徴収の実現に取り組むことをお伝えしました。その後、平成 26 年に協議が整い、平成 27 年から料金システムの設計が進んでおり、いよいよ平成 30 年1月から一括徴収が実現する予定です。
 これにより、市民の皆さまの手間が省けることはもちろん、千葉市だけでも年間 5,000 万円以上の収支改善が見込まれ、さらに関係市や県の改善効果も含めると大きな行政改革となります。
 これからも税金の効率的な運用はもちろん、市民の皆さまの手間と負担を軽減できるよう、新たな発想で鋭意取り組んでまいります。

 私は 11年間の市長在職中にこうした案件について職員とともに一つ一つ解決し、大きな財政効果を上げてきました。
 広域行政体である県はもっと多くの、大きな財政効果を上げることのできる案件を数多く抱えています。上下水道の徴収一元化は県側に決断する職員がいたために千葉市の努力が結果に結びつきましたが、 11年かかっても県側の姿勢が変わらずに解決できない案件もたくさんあります。
 「市町村が頑張ったら対応しますよ」といった広域行政体としての使命感に欠けた姿勢ではなく、率先して県内行政コストを最適化するために自分たちが存在している、給料をもらうことができているという感覚を持って自らが調整に汗をかく行政体となることを期待しています。それには、トップ層の意識、課題設定、リーダーシップが不可欠であることは言うまでもありません。

職員の回想 ~元建設局長(清水 謙司氏)~

○上下水道料金徴収一本化
 熊谷市長から重要課題として上下水道料金徴収一元化を指示された当時、千葉市の下水道料金の徴収率は政令市中最低でした。政令市で上下水道料金の徴収一元化をしていないのは千葉市だけでしたから、徴収率を上げるため一元化を進めなくてはならないと思いました。
 実は2000年から下水道使用料等事務連絡協議会で徴収一元化を検討していましたが、県は「(県営水道の給水エリアの)全 11市が出席しないと協議に応じない」という姿勢でした。ですが、習志野市は下水道料金を市ガス料金と一括徴収し徴収率が高く、参加する必要がありません。私は旧知の習志野市都市整備部次長に頼み、下水道関係者を説得してもらいました。おかげで県も協議に応じてもらえましたが、なぜこんな理由で 10年も滞っていたのかと不思議に思いました。
 私が市役所を卒業した後、習志野市以外の6市からも表向きには「法的に問題はないのか」など不安視する意見が出たそうです。ですが、本音はシステム開発費が掛かるので費用対効果に確信が持てなかったからでしょう。そこで千葉市など4市で先行スタートしました。千葉市の単独徴収最終年度の2016年度と一括徴収初年度の2018年度の現年分徴収額の差額は約2億2000万円。他市がすぐやろうとなったのは、千葉市を見て投資効果が確信できたからでしょうが、早くやればその分効果が早く出たはずです。千葉市が他市と違ったのは市長が指示を出したことです。指示がなく下から上を説得するのは大変です。その点、熊谷市長の判断と私たちの努力で実現した施策と言えます。

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