[2020年8月30日]令和元年度決算の概要、10年20年後を見据えた政治の重要性について

令和元年度決算の概要、10年20年後を見据えた政治の重要性について

令和元年度決算を発表しましたので、ここで紹介します。
一般会計の実質収支は約58億円でした。これは平成以降最大で、記録が残る限り最大でもあります。
この要因は、市有地の売却で予算時に想定した以上の収入があったこと、市税収入が予算で見込んでいた以上に増収であったこと、各部署が執行の段階で創意工夫をしてくれたこと等です。
一部を財政調整基金に積み立て、残高は約89億円。
私が就任した時は財政調整基金は枯渇状況でしたが、財政が苦しい時期もコツコツと積み立てを続けてきました。
<財政調整基金の推移>
・平成22年度:10.9億円
・平成27年度:54.4億円
・令和元年度:89.2億円
新型コロナウイルス感染拡大による世界的な不況が地方自治体の財政にも今後大きな影響を及ぼします。
特に次年度の税収減は深刻で、市民サービスを維持していくためにも、苦境にある市民を支援し、経済を底支えしていくためにも、国に依存せず独自の財政出動を可能にする財政調整基金は重要です。
リーマンショック時は先ほど述べたように基金が枯渇していたため、選択肢が限られていましたが、現在は潤沢とまでは言えないものの、十分な残高があり、必要に応じて機動的な財政出動を行っていきます。
財政健全化プランで削減目標を定めている主要債務総額は4,673億円まで削減し、令和3年度までの目標(4,800億円)を令和元年度時点で既に達成することができています。
市債残高も59億円減で、平成29年度決算で1兆円を切ってからも着実に低減しています。
なお、私は緊縮財政派ではありません。
企業立地に力を入れ、民間活力導入により、市内投資額は堅調に推移しています。
<主要債務総額の推移>
・平成22年度:6,833億円
・平成27年度:5,505億円
・令和元年度:4,673億円
<市債残高の推移>
・平成22年度:1兆815億円
・平成27年度:1兆181億円
・令和元年度:9,732億円
実質公債費比率も0.9P改善し、12.9%。
将来負担比率も7.2P改善し、138.3%。
就任した頃はどちらの数値も政令市ワースト1位でしたが、この間改善を続けています。
<実質公債費比率の推移>
平成21年度:21.1%
平成27年度:18.0%
令和元年度:12.9%(県費移譲の影響を除くと15.2%)
<将来負担比率の推移>
平成21年度:306.4%
平成27年度:208.7%
令和元年度:138.3%(県費移譲の影響を除くと150.1%)
基金借入残高も10億円削減し、247億円。
千葉市は予算繰りが苦しくなった際に基金から借り入れる手法に手を染めたために、この負の遺産を解消する必要があります。財政を健全化させ、財政調整基金に積み立て、さらに過去の基金借入を削減するのは並大抵のことではありません。今後20~30年かけて解消していく必要があります。
就任11年で、千葉市は市債や主要債務、各種財政指標、財政調整基金など多くの分野で大きく健全化し、通常の財政運営上はほぼ問題ない状況に到達しています。
今後数十年、誰が市長になろうと、自由に政策の選択ができる基盤は整えることができたと自負しています。
ただし、放漫な財政運営のツケの全てを解消するには、その運営をしていた時期の数倍の期間が必要です。
だからこそ選挙で首長、議員を選ぶことは住民にとって重要です。ぜひ、政治家の甘い言葉だけでなく、将来に責任をもった選択をしているか、常に注視してください。

政治とは10年後20年後に結果が出るもの

アベノミクスも同様です。日銀による異次元緩和を正常化させるのは並大抵のことではありません。資産縮小による景気下押し効果を考えると慎重に正常化させる必要があり、異次元緩和をしていた期間の数倍はかかるでしょう。
ということは私達の日本が金融において正常化するのはおそらく20年あるいは30年以上かかるということになります。それだけ長い期間正常化させるだけの基礎体力が日本にあるのか、私は懐疑的です。
確かにアベノミクスは短期的に日本の閉塞感を打破したことは確かです。私は緊縮財政派ではありませんので、金融緩和を否定しているわけではありませんし、公共投資を含めた財政出動にも比較的高い評価を持っている立場です。
しかし、これだけ長く異次元緩和を続け、さらに新型コロナウイルスによる不景気のために数年間は継続することが確実である以上、その負の側面(今の負の側面ではなく将来の)をしっかりと日本社会は認識するべきだと思います。
世の中に打ち出の小づちはありません。未来の財布から抜き取って今を底支えしているに過ぎません。抜き取った分以上を未来に返せるだけの効果が果たしてあったでしょうか。
アベノミクスのうち、異次元緩和の評価は10年20年30年後に見えてくるでしょう。「なんであのような馬鹿なことをしたのか」と総括されていない未来になることを切に願っています。
民主主義の難点はここにあります。
政治とは10年20年先を見据えて今、選択をすることです。しかし、政治・政治家の評価は残念ながら短期的な視点、「今がうまくいっているか」で下されがちです。
そのため、政治家は将来を犠牲にしてでも今、良く見える施策に走りがちです。犠牲になったことが分かる頃にはその政治家はもう引退しているのですから。
未来を犠牲にする施策に拍手喝さいを送る有権者たち、未来を守り今の希望に十分に応えられない政治家にブーイングを浴びせる有権者たち。
私達は政治の決断と結果の顕出にタイムラグがあることを十分に理解し、今と過去の政治との関連性を強く理解し、過去の政治・政治家の決断の評価を適切に下すことで、学ばなければ、いつまでも過ちを繰り返していくでしょう。