[2020年5月12日] 4日連続、感染者の発表はゼロ。保健所と検査の関係について
5月11日、新たに新型コロナウイルスの感染が確認された患者はいませんでした。
ここ1週間の感染者は0,0,1,0,0,0,0という状況。千葉県全体では3人(1人は埼玉県在住)で15日連続で一桁です。
新たに2名の方が退院され、患者数95名(入院中24名、退院65名、死亡4名、療養終了2名)という状況。病床は着実に余裕が出てきています。現場で従事して頂いている皆様に心から感謝申し上げます。
ここ数日の検査数については後ほど確定数値を加筆しますが、決して検査数が少ないわけではありません。
保健所が検査を断っているという誤解
時折「保健所がボトルネックになっているのではないか」「民間で検査をもっと」という趣旨のご意見を頂きます。
私はテレビを見ていないのでテレビが誤解を招くような報道をしているのか分かりませんが、保健所が検査を減らしているようなことはありませんのでご安心頂きたいと思います。医師が検査が必要と判断すれば千葉市では確実にPCR検査が実施されています。
誤解の大元は「検体採取と検査の混同」ではないかと思います。
千葉市は保健所のラインに市環境保健研究所があり、ここに3台の検査機器があります(中国の流行を受けて早期に1台追加)。民間の検査機関に回すことも可能ですが、現在この3台で積滞なく検査を実施することができています(感染者が多い東京の事情は分かりません)。
「民間、民間」と言う方は検査する部分にボトルネックがあると誤解していると思われます。
問題は検体採取です。ここでも少し触れたことがありますが、検体採取の際に従事者に感染リスクがあるため、隔離室にて防護服やフェイスシールドなどの完全防備の上で検体を採取し、細心の注意を払って防護服等を脱着する必要があります。
この部分が医療従事者には負担のため実施する医療機関が少なく、インフルエンザの検査のようにどの内科でも気軽に検体採取とはいかないのです。検体採取までして頂いている医療機関の皆さまには感謝していますし、優先的に医療資材を支援しています。
「保健所が検査を断ったってよく聞くけど?」という疑問ですが、そもそも検査が必要か否かは医師が判断するものです。
インフルエンザでも医師の診断無しに保健所で検体採取・診断はしないように、新型コロナウイルスにおいても医師が患者の具合を診断し、新型コロナウイルスが疑われる症状があった場合に検体採取、PCR検査を実施します。
世の中にはたくさんの病気があります。その人が勝手に「新型コロナウイルスかも!」と思っても、医師からすれば「それは違うでしょ」というケースが多々あります。
既に世界中の知見に基づき、新型コロナウイルスに感染した人の特徴というものが分かってきており、これにCTスキャン等による肺の状況などを見て、医師の方が適切に診断頂いています。
保健所が悪者になるのは電話をしてきた市民に対して「まずは医療機関を受診してください」と言うからでしょう。
新型コロナウイルスについて専門的に診断・検体採取を行う専門外来を設置していますが、いきなりそこに「自分は新型コロナウイルスに罹ったかも」と自分で思う方が多数行くと、重要な専門外来が疲弊し、機能が低下してしまいます。近くの医療機関を受診頂き、その医師が「これは新型コロナウイルスの疑いを否定できない」という場合に専門外来に繋ぎ、診断し、専門医師が必要と判断すれば検体採取、PCR検査となります。
なお、中には保健所の相談センターでヒアリングした症状が新型コロナウイルスの可能性が高いと判断すれば、すぐに専門外来に繋ぐケースもあります。千葉市は常に国の指針よりも若干柔軟に運用してきました。
千葉市では専門外来以外でも検体採取を着実に行えるよう、千葉市医師会の協力を得てドライブスルー方式での検体採取を行っています。これにより、医師が検査が必要と判断すれば、土日も含めて計画的に検体を採取し、検査に回すことができています。
残念ながら医療機関の中には発熱等の症状を訴える患者の診察を拒否するところも出ており、これが不信感の要因ともなっています。
市民「新型コロナかも。専門外来で見て!」
保健所「その症状では他の疾病の可能性も高いので、まずは近くの診療所などを受診下さい」
市民「近くの医療機関に断られた!たらい回しじゃないか!」
この不満を周りに広め、保健所不信が拡大しているのかと思います。
私も直接多くのこうした相談を受けていますが、その度に「断る医療機関もあるが、きちんと診察する医療機関も多くあります。体調不良の中で大変でしょうが、もう少し広げて調べて下さい」とアドバイスし、殆どのケースは受診につながり、解決しています。
「だったら診てくれる医療機関を保健所が案内すればいいじゃないか!」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、私たちも市内に無数ある医療機関全ての状況を把握しているわけではありません。
私たちが診療を受けて頂けると把握している一部の医療機関を紹介すると、特定の医療機関に患者が集中してしまいます。いくつか当たって頂き、それでも見つからずお困りのケースは、やむを得ないケースとして受診可能な医療機関に繋ぐなどしています。
保健所は多くの相談を受け、時には罵声も浴びながら一つひとつの相談に対応しています。感染者の聞き取りや疫学調査も含め、市民のために最前線で奮闘している保健所の職員が、まるで融通の利かない門番のように市民の検査を妨害・遅延させているように思われるのは大変心苦しく思います。
私たちは他市に比べても積極的にPCR検査を実施してきた都市ですし、陽性率も首都圏では非常に低い都市です。是非、私たちを信頼頂きたいと思います。
なお、厚生労働省が検体として唾液を使う方法を5月中にも認める方向で検討していることが報道されました。鼻や喉から検体を採取するのは前述のとおり従事者の感染リスクが高いのですが、唾液採取であればリスクは低減されます。
こうした検査方法が認められ、今以上に多くの医療機関で検体採取ができるようになれば、市民の安心はさらに向上するのではないかと思います。
ただし、検査で陰性になったからといって陽性にならない保証はありません。結局は自身の健康管理をしっかりと行い、具合が悪ければ外出せず、他者と接触しない、これを一人ひとりがしっかり行うことが一番なのです。
また、「病床が空いていないから意図的に検査していないんだ」という誤解もあります。
千葉市においては感染症指定医療機関として千葉大附属病院、市立青葉病院があり、それ以外の医療機関も含め、タッグを組んで病床確保に努め、4月に患者がピークだった時も何とか乗り切ってきました。病床事情から意図的に検査の可否を判断するようなことは絶対にないことを断言しておきます。